死亡による逸失利益


149887死亡による逸失利益とは、交通事故に遭わず生存していれば、得ることができたであろう利益を損害とするものです。

死亡による逸失利益の算定式は次のとおりです。

 

 

基礎収入額 ×(1-生活費控除率)× 就労可能年数に対応するライプニッツ係数 = 死亡による逸失利益

以下、基礎収入、生活費控除率、就労可能年数に対応するライプニッツ係数についてご説明します。

 

①基礎収入について

ア 給与所得者(会社員など)の場合
イ 事業所得者の場合
ウ 会社役員の場合
エ 家事従事者の場合
オ 無職者の場合
カ 高齢者

ア 給与所得者(会社員など)の場合

原則として事故前の現実の収入を基礎として算出することになります。

ここでいう収入の金額は、税金などを控除しないいわゆる税込み金額を基礎とされます。

もっとも、現実の収入が賃金センサスによる平均賃金より低い場合で、かつ平均賃金が得られる蓋然性が認められる場合には、平均賃金を基礎として算出できる場合もあります。

また、若年労働者(概ね30歳未満)の場合には、学生との均衡の点もあり、原則として、全年齢平均の賃金センサスが用いられます。

裁判例の中には、将来の昇給について、定年までの毎年の昇給を会社の賃金規定に基づいて認めた事例もあります(大阪地判平3.1.29、広島高判平5.8.31)。

また、昇給規定がなくても、将来の昇給が証拠に基づいて相当の確かさをもって推定できる場合には、昇給も考慮することができるとの判例もあります(最判昭43.8.27)。

イ 事業所得者の場合

原則として、事故前年の確定申告所得額が基礎となります。
申告額と実収入が異なる場合、実収入を立証することができれば、実収入が基礎となります。

もっとも、立証にあたっては、帳簿等の直接の証拠が必要となり、申告額以上の収入を主張する場合には厳格な立証が求められています。

所得が家族の労働や資本からの利益等本人の労働力以外の要素を含めて形成されている場合、所得に対する本人の寄与の割合によって算定されることになります

確定申告を全くしていない場合であっても、直ちに無収入と推定され逸失利益が否定されるわけではなく、相当の収入があったと認められる場合には、賃金センサスの平均賃金などを参考に基礎収入額を定める例が多いです。

ウ 会社役員の場合

会社役員は、労務提供の対価部分は認められますが、利益配当の実質を持つ部分は、基礎収入とは認められません。

エ 家事従事者の場合

家事従事者とは、性別年齢を問わず、家族のために家事労働に従事する人のことをいいます。

算定の基礎としては、賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女子労働者の全年齢平均賃金によります。

従たる家事従事者の場合(子供夫婦と同居する親など)には、現実に分担している家事労働内容や従事できる労務の程度を考慮して、適宜減額された金額を基礎収入金額とされることもあります。

家事に従事しつつ、パートタイマー等で収入を得ている場合には、実収入部分を女性平均賃金額に加算せず、平均賃金のみを基礎とすることになります。

オ 無職者の場合

○失業者で死亡時に収入がなかったとしても、年齢、職歴、就労能力、就労意欲等から就労の蓋然性が高い場合には、逸失利益が認められる可能性があります。

この場合、原則として失業前の収入が基礎収入とされます。

もっとも、失業前の収入が平均賃金以下の場合、平均賃金が得られる蓋然性があれば、男女別の賃金センサスによって基礎収入が算定されることになります。

ただし、病気等により長期間就労していなかった場合や、定年退職後全く求職していなかった場合には、就労可能性が認められず、逸失利益が認められない場合もあります。

○学生・生徒・幼児は、原則として賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、男女別、全年齢平均の賃金額を基礎とします。

小学生や高校生について、その家庭環境や本人の成績などから大学に進学することがほぼ確実と認められる場合に新大卒の平均賃金によることが認められる場合もあります。

年少女児については、男女格差をできるだけ小さくするために、女性労働者の全年齢平均賃金ではなく、全労働者、学歴計、全年齢の平均賃金を基礎収入すべきです。

カ 高齢者

高齢者においても、就労の蓋然性が認められれば、逸失利益が認められます。

算定にあたっては、賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、男女別、全年齢平均の賃金額が基礎とされます。

また、年金について、判例は、各種年金の性質を踏まえて逸失利益性を判断しています。判例や裁判例で認められたものとしては、国民年金(最判平5.9.21)、老齢厚生年金(東京地判平13.12.20)、地方公務員の退職年金給付(最判平5.3.24)、国家公務員の退職年金給付(最判昭50.10.24)などがあります。

 

②生活費控除率

被害者が死亡した場合、被害者の収入はなくなるとともに、他方において被害者が生存していれば生じた生活費は発生しなくなります。

したがって、逸失利益の算定にあたっては、これを控除することになります。

生活控除率は、家族関係、性別、年齢に照らして下表の割合となります。

区 分 生活費控除率
一家の
支柱
被扶養者が1名の場合 40%
被扶養者が2名以上の場合 30%
女性(主婦・独身・幼児等を含む) 30%
男性(独身・幼児等を含む) 50%
兄弟姉妹が相続人となる場合 事案によるが高くなる傾向
年金生活者 通常より高い(50%~70%)

※この表は、目安であり、個別具体的事情によって異なる控除率で算定されることもあります。

原則として税金の控除はされません。

逸失利益は所得税の対象となる「所得」ではなく、また、長期にわたる税額の予測も困難であることから、原則として税金は控除されません。

 

③就労可能年数に対応するライプニッツ係数

○就労可能年数

就労可能年数は原則として67歳です。67歳を超える方については、簡易生命意表の平均余命の2分の1が就労可能年数となります。

ただし、67歳までの年数が平均余命の2分の1よりも短くなる方は、平均余命の2分の1が就労可能年数となります。

未就学者の就労の始期は、原則として18歳ですが、大学進学を前提とする場合には大学卒業予定時となります。

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○ライプニッツ係数

逸失利益は、事故に遭わなければ被害者が将来にわたって得られたはずの利益ですが、その金額をそのまま受け取ると、本来受け取ることができる時点までに発生する利息分も被害者が取得することになります。

ライプニッツ係数は、このような中間利息を控除して、一時金に変算するのに用いられる係数です。

ライプニッツ係数についてはこちらからどうぞ

 

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