高次脳機能障害の後遺障害


弁護士交通事故による高次脳機能障害について、判断を行うことになる自賠責保険の認定では、損害保険料率算出機構が原則として労災保険における障害の等級認定の基準に準じて行うこととされています(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号)。

そこで、まず、労災保険での認定基準についてご説明いたします。

 

労災保険の認定基準

弁護士鈴木啓太労災保険での高次脳機能障害の認定は、平成15年に基準が作成されています(「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について」)。

そこでは、①意思疎通能力、②問題解決能力、③作業負荷に対する持続・持久力、④社会行動能力という4つの能力に分類した上で、各能力を6段階で評価して、等級を決定するという手法をとるとされています。

この認定に当たっては、基本的には、労災保険指定医院の医師の面談が行われています。

 

 

自賠責保険の認定基準

弁護士他方で、自賠責保険においては、先ほどご説明したとおり、労災保険の基準に準じるとはしているものの、原則として書面調査であり、医師面談や被害者面談までは行われていません。

こうした違いにより、労災保険の基準をそのまま適用することはできないという側面もあります。

そこで、高次脳機能障害については、自賠責保険も独自に認定基準の目安を作成しています。それが以下の表のとおりです。

等級 認定基準 補足的な考え方
1級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 身体機能は残存しているが、高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの
2級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 著しい判断能力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体的動作には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや監視を欠かすことができないもの
3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また、声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの
5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし、新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの
7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの
9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業能力などに問題があるもの

弁護士1級と2級の違いは、「常に」介護が必要といえるか、「随時」介護で足りるかという点にあります。

また、2級と3級では、補足的な考え方も含めて考えると、生活範囲がほぼ自宅や施設にとどまっているかどうかによって異なるといえます。

 

 

具体的な認定手続

自賠責保険は、高次脳機能障害の認定について、先ほどの認定基準にしたがって、審査を行っていますが、交通事故による高次脳機能障害の事案として、そもそも審査対象とする案件について、以下のとおり定めています。

A 後遺障害診断書において、高次脳機能障害を示唆する症状の残存が認められる(診療医が高次脳機能障害または脳の器質的損傷の診断を行っている)場合

画像診断検査のイラスト全件高次脳機能障害に関する調査を実施の上で、自賠責保険審査会において審査を行う

具体的には、主治医の作成する後遺障害診断書に、「くも膜下出血」、「脳挫傷」、「びまん性軸索損傷」といった脳の外傷の診断がなされ、それに基づく自覚症状が記載されている場合です。

この場合には、すべての事案で高次脳機能障害の判断が必要な事案として処理されます。

 

B 後遺障害診断書において、高次脳機能障害を示唆する症状の残存が認められない(診療医が高次脳機能障害または脳の器質的損傷の診断を行っていない)場合

以下の①〜⑤の条件に該当する場合には、見落とされている可能性があるので慎重に調査を行う

①初診時に頭部外傷の診断があり、経過の診断書において、高次脳機能障害、脳挫傷(後遺症)、びまん性軸索損傷、びまん性脳損傷の診断がなされている症例

②初診時に頭部外傷の診断があり、経過の診断書において、認知・行動・情緒障害を示唆する具体的な症状、あるいは失調性歩行、痙性片麻痺など高次脳機能障害に伴いやすい神経症状が認められる症例(具体的には、知能低下、思考・判断能力低下、記憶障害、記銘障害、見当識障害、注意力低下、発動性低下、抑制低下、自発性低下、気力低下、衝動性、易怒性、自己中心性)

③経過の診断書において、初診時の頭部画像所見として頭蓋内病変が記述されている症例

④初診時に頭部外傷の診断があり、初診病院の経過の診断書において、当初の意識障害(半昏睡〜昏睡で開眼・応答しない状態:JCSが3〜2桁、GCSが12点以下)が少なくとも6時間以上、もしくは、備忘あるいは軽度意識障害(JCSが1桁、GCSが13〜14点)が少なくとも1週間以上続いていることが確認できる症例

⑤その他、脳外傷による高次脳機能障害が疑われる症例

弁護士このようにB案件と呼ばれる案件では、高次脳機能障害が医師の中でも見落とされやすい症状であることを踏まえて、後遺障害診断書がない事案でも治療経過などから高次脳機能障害が疑われる事案であれば、調査を行うとされています。

 

 

認定のために必要な書類

交通事故による高次脳機能障害について、自賠責保険の調査においては、主に以下の書類が必要になります。

  • 後遺障害診断書
  • 治療経過の診断書、明細書
  • カルテ
  • 頭部、脳の検査の画像(CTやMRI)
  • 日常生活状況報告書
  • 神経系統の障害に関する医学的意見
  • 頭部外傷後の意識障害についての所見

保険高次脳機能障害以外の案件では、後遺障害診断書と治療経過の診断書、明細書、検査画像があれば、基本的には審査が行えますが、高次脳機能障害に関する事案については、カルテによる詳細な検討が必要です。また、通常の案件にはない、日常生活状況報告書などの書類を準備する必要があります。

他にも、介護手帳やその申請の書類、学校の通知表なども資料として提出することがあります。

このように、高次脳機能障害の審査にはとても専門性が要求されます。したがって、交通事故の被害者の方やそのご家族だけで手続を進めるのは非常に難しいものです。

 

 

デイライト法律事務所の弁護士によるサポート

弁護士西村裕一の画像デイライト法律事務所では、交通事故を専門的に取り扱う弁護士が専門性の要求される高次脳機能障害の案件について、サポートをさせていただきます。

具体的には、主治医との面談やカルテ開示による内容の検討を通じて、後遺障害診断書の作成を医師に依頼したり、被害者の方が入所されている施設にお伺いして状況を確認した上で、施設の方にも日常生活状況報告書の作成をお願いしたり、ご家族の方に弁護士から必要な書類をアドバイスさせていただいたりと適切な等級が認定されるように全面的に活動をさせていただきます。

福岡で交通事故による高次脳機能障害、脳の外傷による後遺症にお困りの方、ご家族の皆様は、まずはデイライト法律事務所の弁護士にご相談ください。

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