弁護士コラム

交通事故による高次脳機能障害の後遺症の等級が争われた裁判例を弁護士が解説


交通事故交通事故にあった際に頭部に衝撃を受けると、脳を損傷するケースがあります。脳を損傷してしまうと、意識を一時的に失ってしまいます。

こうした脳外傷が起こった場合、仮にその後に意識が回復したとしても交通事故の前の状態に完全に戻ることは難しく、後遺症が残る可能性があります。

脳外傷後の後遺症を高次脳機能障害といいますが、この高次脳機能障害については、その障害の程度がどの程度かを巡って、保険会社と争いになるケースが多くあります。

金沢地裁で争われた平成29年9月26日判決の事案も高次脳機能障害の後遺症の等級が争点となった事案です。

以下では、交通事故を専門とする弁護士がこの裁判について解説をいたします。

 

事故の内容

バイク事故大型自動二輪車に乗っていた被害者が直進していたところに、反対車線からガソリンスタンドに入ろうと右折してきた加害者の自動車と衝突したという交通事故です。

この事故では、被害者の方が自動車を避けようとした際にバイクが横転してしまい、横滑りをしながら自動車にぶつかっています。

 

けがの内容と通院状況

病院被害者は事故直後に大学病院に緊急搬送され、そのまま49日間入院を余儀なくされています。

このとき被害者の家族は、医師から「びまん性軸索損傷、脳挫傷、外傷性くも膜下出血」との診断名を告げられ、重度の意識障害があると説明を受けています。

その後、大学病院から別の病院に転院し、そこで入院生活を継続しました。この時点で被害者はいまだに意識障害が軽度ですが残っており、注意障害や記憶力の障害も出ている状況でした。

この病院には約4か月ほど入院をし、退院後も事故から1年半ほど定期的に経過観察を受けに行き、症状固定と診断されています。

 

自賠責保険の認定

被害者は加害者の保険会社を通じて、症状固定となった後に後遺障害の事前認定を受けています。

後遺障害申請書この結果、脳外傷による高次脳機能障害の部分については、
「神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」
に該当するとして7級4号の認定を受けています。

被害者にはこのほかにも後遺症があったため、最終的な等級は併合6級となっています。

 

保険会社の主張

保険会社保険会社は、被害者がその後料理人として、食材の仕入れやメニューの考案などを行い、お店でお客に対して料理の説明なども自ら行っていると主張して、就労が十分できている以上、被害者に残存した後遺症は7級ではなく12級にすぎないと主張して、自賠責保険の判断を争いました。

 

裁判所の判断

裁判所裁判所は、保険会社側の主張を受け入れず、自賠責保険の認定どおり被害者の高次脳機能障害による後遺症を7級4号が相当であると結論づけました。

その理由として、まず、医師が作成した後遺障害診断書や神経系統の障害に対する医学的意見、頭部外傷後の意識障害についての所見という書類に関しては、被害者の症状を直接見て治療を行っていた医師が専門的な知識によって作成しているので、不自然な点がカルテと照らし合わせても見当たらないという点を挙げています。

そして、被害者の症状固定時の症状として、
「以前覚えていたことを思い出せない、自発性低下、行動を計画したり正確に遂行することができない、ふさぎ込む、気分が落ち込むといった状況がみられ、知人と話していて誰か思い出せないことが多く、家族に教えてもらっていることや、新しいことや手順を覚えるのに時間がかかること、家族の補助があれば日常生活は可能であるが、仕事は家族などのかなりの補助がないと不可能と思われる」
という記載が医師の書面に記載されていることを認定し、自賠責保険と同様に7級4号が相当であると判断しています。

そして、被告の主張に対しては、仕事は再開したものの、包丁さばきが稚拙となり、細かい作業ができなくなったことや予約を受けたことやレシピも忘れてしまい、妻やアルバイトのサポートを受けていることが証言などにより認定できること、被害者が自動車を一人で運転している事実はあるが、自損事故を数回起こしていて、運転に問題が生じていたという状況を根拠に、認められないとしました。

 

 

弁護士のコメント

弁護士西村裕一この事案では、医師の作成した書面の信用性が重要な考慮要素になっています。すなわち、治療経過が記載されているカルテに沿って矛盾なく、後遺障害診断書やその他の書類が作成されているという点が自賠責保険の判断をそのまま変更しなかった理由となっています。

交通事故による高次脳機能障害の事案では、後遺障害診断書の他にも、医師に「神経系統の障害に対する医学的所見」、「頭部外傷後の意識障害についての所見」という書類を作成してもらわなければなりません。

しかしながら、医師は非常に多忙です。特に、高次脳機能障害が残る事案というのは交通事故により脳に外傷を負った方ですので、医師は重症者の患者に数多く対応しているわけです。

そのような多忙の医師に適切に書類を作成してもらうためには、あらかじめカルテを被害者側で確認して、内容をしっかりと把握した上で医師に作成を依頼することが大切です。

もっとも、被害者の方やそのご家族が自分たちでカルテの中身を検討して医師に作成を依頼するのは非常に困難です。したがって、交通事故に強い弁護士のサポートを受ける必要があります。

弁護士西村裕一デイライト法律事務所では、福岡で年間300件を超える交通事故の被害者のご相談に対応しており、その中で、高次脳機能障害を負った被害者の方のサポートもこれまで継続して行っております。

具体的には、カルテの検討やその後の後遺障害診断書の作成を医師に依頼することや自賠責保険への後遺障害の申請、保険会社との示談交渉など、解決に向けたあらゆる対応を被害者の方に変わって弁護士が行います。

福岡で交通事故にお困りの方は、デイライト法律事務所の弁護士にご相談ください。

弁護士による高次脳機能障害の解決事例の一部はこちらをご覧ください。

 

 

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