弁護士コラム

加害者が死亡した場合、賠償はどうなる? ー 福岡の多重事故から

掲載日:2019年6月6日
近年、高齢ドライバーの操作ミスによる事故が報道で取り上げられる機会も多くなっていますが、先日、福岡でも80代の方が運転する自動車が逆走して多重事故が発生しました。

この事故では9名の方が重軽傷を負っています。被害にあわれた方には、お見舞い申しあげます。

報道や加害者の車のドライブレコーダーの映像から、逆走した距離は700メートル、速度は130キロも出ていたのではないかといわれています。

事故直後の現場で車が横転している状況などをみると、いかに危険な走行であったかということや事故の惨劇を物語っています。加害者の80代の方は逆走当時、意識を失っていたのではないかという指摘もされているところです。

ところで、今回の福岡の交通事故では、逆走をしてしまった加害者の方が死亡しています。
このように、加害者が死亡してしまった場合に被害者の賠償はどうなるのでしょうか?

以下で検討してみたいと思います。

加害者が任意保険に加入していない場合

加害者が自動車に任意保険をつけていなかった場合、被害者の賠償は、①自賠責保険への請求、②相続人に対する請求により求めていくことになります。

①自賠責保険への請求

加害者が任意保険に加入していない場合でも、自動車には強制保険である自賠責保険がついているのが通常です(例外的に自賠責保険の期限切れということがあります。)。
そのため、加害者が死亡してしまった場合でも、被害者としては加害者の自賠責保険へ損害の賠償を求めることが可能です。

ただし、この場合にはあくまで自賠責保険の基準の支払いになりますので、けがの限度額は120万円まで、後遺障害の限度額も75万円から4000万円までというように上限が決まっています。

②相続人に対する請求

そこで、自賠責保険の基準を超える部分の損害については、加害者に対して請求することになります。しかしながら、加害者がすでに死亡してしまっている場合には請求する相手がいないことになります。

この点、加害者に家族がいる場合、被害者は加害者の相続人に対して損害賠償請求をすることが可能です。
相続というと、預貯金や不動産などプラスの財産を受け取るというイメージがありますが、損害賠償義務というマイナスの財産も対象になっています。

そのため、加害者が死亡した場合、加害者の配偶者、子、両親、兄弟に対して事故の賠償を求めるということになります。

請求をするためには条件があります。
それは、加害者の家族が相続放棄をしていないということです。
相続放棄をしている場合には、損害賠償債務を引き継がないということが裁判所に認められているため、被害者が相続人とされる家族に対して賠償を求めることはできなくなってしまいます。

③人身傷害保険の活用

このように加害者が任意保険に加入していない場合、相続人がいない場合や家族が相続放棄をしてしまっている場合には、被害者は自賠責保険の部分しか賠償を受けることができなくなってしまいます。

そこで、被害者が自らの自動車保険についている人身傷害保険を活用することで少しでも損害を補填するという方法を検討する必要があります。

人身傷害保険についてはこちらもご覧ください。

 

加害者が任意保険に加入している場合

加害者が任意保険に加入している場合には、被害者としては任意保険会社に対して賠償を求めたいと考えるのが通常です。

このとき、保険会社は契約者である加害者が死亡していることを理由として賠償義務を拒むことはできないことになっています。

電卓

したがって、加害者が任意保険に加入している場合には、通常の交通事故のケースと同じく、任意保険会社が治療費や休業損害、慰謝料などを支払ってくれます。

もっとも、今回の福岡の事故では、加害者だけでなく、同乗していた妻も死亡してしまっています。そのため、保険会社に交通事故の報告をする人がいないという可能性があります。

保険会社としても事故の報告を受けなければ、原則として被害者対応を開始することができません。
したがって、今回のケースでは、被害者の方への連絡や対応にどうしても時間を要するという可能性があります。

その場合には、取り急ぎ、先ほど紹介した人身傷害保険を使用して、当面の治療費の負担を被害者の保険会社にお願いするといったことも検討しなければなりません。

なお、加害者の保険会社との間で、慰謝料の金額などで折り合いがつかず、示談が成立しない場合でも、直接保険会社を相手方(被告)として裁判を提起することもできます。

 

まとめ

弁護士西村裕一

加害者が死亡してしまった場合には、上記のとおり、通常の交通事故の場合と異なる検討が必要になります。

そのため、被害者の方は専門家である弁護士のアドバイスを受けて、どのように賠償を求めていく必要があるのかを確認しておかなければなりません。

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