年少者の後遺障害による逸失利益はどのように算定方法するのですか?

= 後遺症による逸失利益
により算定します。
逸失利益とは
交通事故による後遺障害が原因で、本来得ることができた利益が得られなかった場合、その得られなかった利益を後遺障害による逸失利益といいます。
算定にあたっては、労働能力の低下の程度、収入の変化、将来の昇進・転職・失業等の不利益の可能性、日常生活上の不便等を考慮して行います。
基礎収入額
幼児・年少者は、逸失利益を算定する基礎となる収入がありません。
したがって、逸失利益を算定は本来不可能となります。
しかし、最高裁は、
「事故により死亡した幼児の得べかりし利益を算定するに際しては、裁判所は。諸種の統計表その他の証拠資料に基づき、経験則と良識を活用して、できるだけ客観性のある額を算定すべきであり、一概に算定不可能として得べかりし利益の喪失による損害賠償請求を否定することは許されない」
と判じしました(最判S39.6.24)。
幼児・年少者の基礎収入額に関する資料は賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、男女別の全年齢平均賃金額を用います。
男女別の平均を用いるのは、男子と女子の賃金格差を是正するためです。
事故時14歳の女子、15歳の女子(中学生)の場合は、男女別の全年齢平均賃金額を基礎収入としており、小学生、中学生くらいでは、大卒の賃金センサスでの基礎収入を認められるのは難しいようです。
労働能力喪失率
労働能力喪失率ですが、後遺障害で認定される等級により異なります。
基本的には、国が定めた下記の労働能力喪失率表に基づいて算定されます。
労働能力喪失率表
第1級 | 第2級 | 第3級 | 第4級 | 第5級 | 第6級 | 第7級 |
---|---|---|---|---|---|---|
100% | 100% | 100% | 92% | 79% | 67% | 56% |
第8級 | 第9級 | 第10級 | 第11級 | 第12級 | 第13級 | 第14級 |
45% | 35% | 27% | 20% | 14% | 9% | 5% |
就労可能年数
就労可能年数は49年です。
就労可能年数に対応するライプニッツ係数
中間利息を控除するため、ライプニッツ係数を乗じます。
ライプニッツ係数は、赤い本の「18歳未満の者に適用する表」の計算式を使用します。
年少者の逸失利益の計算例
(計算例)14歳の少年が交通事故で後遺障害が残り、上腕骨遠位部骨折で第10級10号に認定された場合
年齢 | 14歳 |
---|---|
後遺障害 | 上腕骨遠位部骨折で第10級10号 |
基礎収入 | 男子全年齢平均賃金536万400円 |
労働能力喪失率 | 27% |
就業可能年数 | 49年 |
ライプニッツ係数 | 18.4934-3.5460=14.9474 (18歳未満の者に適用する表14歳より) |
以上より
536万400円×0.27×14.9474≒2163万円
が逸失利益になります。
なお、後遺障害等級10級の自賠責保険金の上限は461万円です。
残りは、加害者の任意保険や自己負担で支払われることになります。
このように、基礎収入や労働能力喪失率、労働能力喪失期間の算定には複雑な問題が多く含まれています。専門家である弁護士に相談することをお勧めします。
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